作曲者の自作紹介。 「は演奏グループARC(fl.:小泉浩、cl.:鈴木良昭、打 : 山口保宣、hrp.: 篠崎史子、elec.p.:高橋アキ)を想定して作曲し、4月28日、彼等の第3回演奏会で初演 された。A.ベルクの<2 Lieder>の2曲目の全音程セリー(F-E-C-A-G-D-bA-bD-bE-bG-bB-H) の切片(トロンソン)のしつような反覆によって、この曲はなりたっている。トロンソン の反覆は十二音音楽でもゆるされていたが、この曲の場合は、その反覆の時間が余りに も長いので、十二音音楽的には聞こえないだろう。私にとって、十二音音楽の引用は、 <現代>が十二音音楽とはまったく無縁であることの証明なのである。」 1976年、上記ARC演奏会を聴きに行きました。スティーブ・ジョブスがアップ ルコンピュータ(キット)1号機を発売した年ですが、まだ、コンピュータは大学、 研究所、大企業の奥の院で鎮座していたころ。まさか20年もたたないうちに、自宅 でコンピュータを使って、この曲を再現できる時代が来るとは夢にも思いませんでし た。 古い楽譜をひっぱり出して、データ入力していると、あの当時のことを思い出します ね。オイルショック、浅間山荘事件、ロッキード事件。一つの時代が終わり、新しい 秩序への移行時期。この曲もそんな時代の気分を反映していると思います。 ミニマール風のユーモアと風刺に満ちた楽しい曲ですが、かなり毒を含んでいるので 、この種の現代作品に免疫のないかたはダウンロードを見合わせた方が賢明でしょう 。                                  窪田 洋